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弥陀の舞う島

日吉通信(平成21年2月27日)
暖冬の影響か今年もあまり厳しい寒さを感じませんでしたね。むしろ不況の冬将軍の方が遥かにどっかりと居座ってしまった気がいたします。我々の現役時代にも何度か厳しい不景気に遭遇しましたが、今回の不況はそのスケールも及ぼす影響もこれまでとは比較にならぬほど甚大な事を肌身で感じます。
最先端の米国流金融工学なるものが如何にインチキな代物であったのか白日の下に晒される結果となりましたが、全世界を未曾有の混乱に巻き込んだ元凶の米国から反省や謝罪の弁がなぜか聞こえてこないのには強い憤りを感じます。
先日来我家の小さな畑に“フキノトウ”が次々と顔を出しています。毎年この時期てんぷらやフキノトウ味噌にして季節の香りを楽しんでいます。
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写真:我家の畑のフキノトウ
<九十九里浜>
先月伊豆で食べた地魚の味が忘れられず、10日ほど前に外房・九十九里浜方面へ家内と片道3時間の日帰りドライブをしてきました。ここを選んだのにはもう一つ理由があり、最近テレビでよく宣伝している温泉施設「太陽の里」を訪ねるのも目的でした。「太陽の里」は九十九里海岸のそばに建つ大型リゾート施設で、設備の豪華さはこれまで訪れた全国の温泉の中でもトップクラスにあると思いました。特に屋上に特設された露天風呂「天空の湯」から眺める太平洋の眺望は最高で、久しぶりに心からの解放感を味わうことが出来ました。
長年瀬戸内海を眺めて生活してきた我々夫婦にとっては、青く広い海原を眺め潮風を肌に感ずる時が何と云っても最高のストレス解消になります。
その後、奮発して注文した“船盛のお造り”は新鮮な地魚満載で大満足しました。首都圏からでも伊豆や房総半島まで足を延ばせば瀬戸内に負けぬ旨い魚を口にする事が出来るのがわかったのでこれからも時々遠出してみたいと思っています。
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写真:九十九里浜
<小説「弥陀の舞う島」>
昨年の末、フジテレビで「風のガーデン」と云う連続ドラマが放映されましたが、見られた方も多いのではと思います。中井貴一演ずる末期の膵臓癌に蝕まれた医師を、父親である緒形拳演ずる田舎の老医師が一緒に暮らした家でその最期を静かに看取ると云う内容のドラマでした。美しい北海道・富良野の四季を背景に、家族愛や取り巻く人々の友情を見事に描いた感動的な作品だったと思います。ドラマを見た人々は、否応無く“死”と云う問題を直視したのではと思います。
先日家内の母校県立三津田高校(呉市)の同期会世話役より、同級生だった松浦尊麿氏が「弥陀の舞う島」と云う小説を出版したので読んで欲しい旨のメイルが舞い込みました。三津田高校は呉では戦前から進学校として知られ各界で活躍している卒業生も多く、同窓会の活動も結構盛んな様です。
松浦氏は、瀬戸内海に浮かぶ蒲刈島にあるお寺の息子さんで、大阪の医科大学を卒業後地方のケア医療に長年力を注いでこられた方だそうです。
小説は著者の生れた島、蒲刈島を舞台に過疎地で医療,看護,介護の問題に苦悩する老人達の世界を医者の目から赤裸々に描いてありました。
私も呉に住んでいた頃、蒲刈島には遊びに行った事もあり、また会社関係の葬儀で島内のお宅を訪れた事もありましたので、小説中の描写は方言も含め具体的なイメージとして思い浮かべる事が出来ました。
小説に登場する老人達の老いによる気力,体力,知力の衰えと病魔の進行、回りの人々に対する気配りや遠慮,孤独感など読者にも強く伝わるものがありました。特に生まれ育った土地や家,地域の人々に対する執着には理屈抜きのものがあり、これは誰も侵害する事の出来ない基本的人権そのものの様に感じました。
著者が言いたかったのは、国や地方自治体による今の医療,福祉行政は本来あるべき姿とは乖離しておりもっと血の通った別のやり方があるはずだ、皆がこの問題を直視して一緒に考えて欲しいと云う事だと思いました。
人間は他の動物と違い死に際して“DIGNITY(尊厳)”を最優先させねばなりません。残念ながら人間が墓に入る迄には己の尊厳を保つために回りの介助がどうしても必要になります。安らかに天国へ旅立つ事の出来る地域の医療・福祉態勢の整備は現在の日本にとって喫緊の課題だと考えます。
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写真:蒲刈島(呉市・野呂山頂展望台より 平成13年撮影)
最近映画「おくりびと」がアカデミー賞(外国語部門)をとったニュースが大々的に報じられておりますが、これが若い人にとって死と云うものを真剣に考える機会になってくれれば大変意義深いことであると思います。
今回は少々重い話題になってしまったこと悪しからずお許し下さい。
書籍の紹介  書籍名:「弥陀の舞う島」著者:松浦尊麿(まつうら たかまろ)
         出版社:日本文学館   価格;1300円
おわり

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