会社の評判
日吉通信(H20年11月23日)
今年も日吉駅前の慶応大学日吉キャンパス銀杏並木が黄金色に輝き、年の瀬が近い事を否応なしに感じてしまいます。世の中、世界的な金融危機や国内政治の混乱など将来に不安を抱かせるニュースばかりで明るい気持ちにはとてもなれませんね。
昨日近くのガソリンスタンドに給油に行ったのですが、リッターなんと117円まで下がっているのに驚きました。つい先日まで170円を超えていた事が信じられません。考えてみると昨年来の原油価格の狂気じみた高騰は、一握りの強欲な投機筋や機関投資家のなりふり構わぬマネーゲームによるものですが、全世界の真面目に働いている人々の生活を窮地に陥れるこの様な連中は決して許してはならないと思います。国内石油業界の価格競争は資本主義のお手本のように機能している様ですが、最近鉄鋼業界の価格カルテルのニュースが大きく報じられ考えさせられてしまいました。

写真:我が家の庭の秋
<会社の不祥事>
昨今テレビや新聞誌上で国内鉄鋼メーカー数社による亜鉛メッキ鋼板カルテル摘発のニュースが大きく報じられており、私もOBの一人として心配しています。リタイア後年月が流れ詳しい情報を知っているわけではありませんが、我が日新製鋼はその中にあって損な役割を演じざるを得なかったのではと想像しています。
“利口な”他社に比べ良くも悪くも日新は“田舎者”であったのではと思います。残念ながら少々脇が甘かったのではないでしょうか・・・。
抜け駆けした一社だけ告発を免れた様ですが、したたかな彼らの身のこなし(法務対応)を見習って欲しいものです。東京地検が入って本社はピリピリとした環境の中にあり、社員たちも肩をすくめている事でしょう。
ただ会社の不祥事に関しては、本社より地方の工場で働く一般社員たちの方が遥かに肩身を狭くしているはずです。それは彼らが地域社会と密着し、社員意識を周囲に対しより強く持っているからにほかなりません。
私は20年前呉製鉄所で発生した高炉のガス爆発事故を思い出しました。昭和63年7月、第二高炉のオーバーホール完了直後、熱風炉燃料ガス管内爆発により4名の犠牲者と30名を超える被災者を出すと云う社の歴史始まって以来の大惨事に直面しました。
確か夜中の1時過ぎだったと思いますが、上司が自宅から電話で「製鉄所内でガス爆発事故があったらしい。詳細はわからないが直ちに本事務所へ出頭するように」との連絡を受けました。私が駆けつけた時はまだ事故の直後で対策本部も出来上がっていない状態でしたが、1時間ほどで大勢の管理職や関係者が駆けつけそれぞれ被災者の救出・救護,原因究明と設備復旧,警察・消防や関係官庁への対応,製鉄所全工程の応急操業プランの策定など色々なグループが有機的に動き始めました。製鉄所は常日頃からこの種の緊急時の訓練を徹底して行っているためか、時間とともにボトムアップで事故対策本部が立ち上がり一本の指揮命令系統が確立してゆく様には目を見張りました。
私は製鉄所内でも最下流の熱延工程を担当していましたので、災害現場での役目は指示されませんでしたが、会社側の人間として犠牲者の一人の担当を命じられ、駆けつけた家族の方々への対応や、警察署に設置された安置所から検視を受けるため広島市内にある大学病院まで遺体に同行しました。暗い待合室(丁度その日は土曜日の閉院日)で数時間待ったのですが、これほど時間の経つのが長く感じられた事はありませんでした。
検視が済んだ後遺体を会社の救急車で自宅まで送り届けたのですが、大勢のご家族,親族の待っているお宅に上がる時の敷居の高かった事は今も忘れられません。
当日は私の人生にとってまさにTHE LONGEST DAY でしたが、この惨事の一応の後始末がつくまでにはその夏いっぱいを要しました。
この間社員はひたすら謹慎し、買い物など市内の人通りの多いところに出るのも憚られる思いでした。私の担当する熱延工場は長期間深刻な鉄源不足に陥り、変則的な操業を強いられましたが何とか会社の危機を乗り切る事が出来たのは不幸中の幸でした。私がこの事件を通じて感じたのは持ち場持ち場で会社の危機に進んで真正面から立ち向かおうとする頼もしい社員が大勢いた事でした。会社に何日も泊り込み、火中の栗を拾おうとする人たちの姿には感動しました。私の直属の部下であった係長の一人は、たまたま当日山口県方面へマイカーで旅行中でしたが、カーラジオで事故を知り旅行を中断、そのまま会社まで数時間かけて駆けつけてきたのには感服しました。
もちろん事故と距離を置こうとするするケチな管理職や、スタンドプレーをする人も散見はされましたが、大部分の社員は会社の危機に際し自己のベストを尽くそうと皆一生懸命でした。これは社員が会社に対し強い信頼と愛着を持っていたからだと思います。私は現在の社員もこの誇るべき伝統を受け継いでいるものと信じています。どうか一日も早く今回の不祥事を清算し世の中に信頼され愛されるに日新製鋼を取り戻してくれるよう心より願っています。
おわり
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