父の入院
日吉通信(H20年6月25日)
早いもので今年もすでに半分が過ぎ去りました。これから3ヶ月は昨年同様の酷暑が続きそうですが、お互い健康には気をつけて元気にのりきりたいですね。
家内も二度にわたる白内障の手術の経過が順調で、先日ようやく先生の許可が出てメガネを新調しました。なかなか良く見える様で好きな手仕事や読書がストレス無く出来るようになったと喜んでいます。
日吉駅も先日の横浜市営地下鉄の乗り入れに続き、今月は目黒線が日吉まで延長されました。ラッシュ時には狭いホームが人でごった返し、以前に比べお年寄りなどは危険な状態になったと思います。便利になるのは良いのですが、これだけ過密化すると地震,洪水,停電など一旦非常事態に陥った時の混乱が心配です。
<父の入院>
私の父は先月で94歳になりました。年々足腰が弱って好きな散歩や近場の買い物などはかなり不自由になりましたが、屋内では日に何度も2階の書斎に上がり机に向かう生活を先日まで続けておりました。ところが今月に入り急に歩行が困難となり日々の生活にも支障を来たす様になりました。かかりつけの医院で診て貰うべく出かけようとしたのですが、これまでの様に車に乗せる事が出来ないため、先生に特別にお願いし往診に来て戴く手配をしました。
往診日は月曜日だったのですが、日曜日の朝の様子が明らかにおかしかったため急遽介護タクシーを呼んで近くの川崎市立井田病院の急患窓口に連れて行きました。当番医は若い女医さんでしたが優秀な先生で、CT検査写真より異常を見つけ脳外科手術が必要と判断、受け入れ先の川崎市内の脳外科病院に話をつけ救急車も手配して送り出してくれました。
父が入院した病院は川崎駅近くの川崎幸病院(幸区)で、我家からは車で30分強の所です。都心のそれも私立の病院なのでスペース的には少し窮屈な感じはしましたが、後で聞くと脳外科では川崎市内でも有名な病院である事がわかりました。
執刀医の説明によると父の病名は「慢性硬膜下血腫」と云い、頭蓋骨の内側にある硬膜と脳の隙間に血腫が少しづつ溜まり、これが脳を圧迫して歩行困難になったものとの事でした(脳自体に損傷ナシ)。このまま放置すると意識障害や深刻な後遺症を招くそうですが、発見が早かった事は不幸中の幸いでした。
手術は翌日の月曜日に行われたのですが、頭蓋骨に2箇所小さい孔を開け、血腫を排出した後に洗浄すると云う脳外科としては比較的簡単な手術との事で、3時間ほどで無事手術室から出てきました。
翌火曜日には集中治療室から一般病棟に移され、専任のスタッフによるリハビリが始まりました。リハビリは運動だけでなく言語やメンタルな分野も含まれており、経験豊かな若い療法士(女性)の方々が献身的に面倒を見てくれました。
入院期間は通常1週間だそうですが、父の場合は高齢である事を考慮して2週間ほど置いて貰う事が出来ました。この間、家内や弟,二人の妹達とシフトを組み、毎日病院に父を見舞いました。母は高齢にもかかわらず連日病院に通い続け父の面倒を看ましたが、その献身ぶりには頭の下る思いがしました。
手術前には最悪“寝たきり”も覚悟しましたが、退院後は部屋の中を杖を使いヨチヨチですが歩いたり、新聞にも目を通すなど予想以上の回復振りに驚いています。
退院後の生活を考え、これまで全く縁がなかった介護関係の勉強も急遽始める事になりました。家内が近くのケアプラザへ頻繁に相談に出向きましたが、係員が適切なアドバイスをしてくれ本当に助かりました。
彼らは公的な立場のスタッフで営利目的の人たちではないのですが、相手の立場に立った心のこもった対応をしてくれました。

写真:6月の我が家の庭
この度の入院の顛末をみて、これも父の人徳とは思いますが、父は実に幸せな人だと思いました。
献身的に日々の生活をみてくれる母、近郊に住んでいて何時でも駆けつける事の出来る4人の息子,娘たち、身近な嫁の存在など、これ以上望めない条件を揃えています。
振り返って回りを見るに、多くの独居老人、老々介護の夫婦、人間関係の崩壊した夫婦や家庭,物理的に遠く離れてしまった家族等々、一旦何かあってもすぐに十分な医療や介護の態勢がとれぬケースの方が遥かに多いように思えます。将来の自分自身を考えた場合も、不安がいっぱいと云うのが正直なところです。
私としてはあまり先の事まで先回りして悩まない事、妻のご機嫌を損ねないよう心がける事また介護する立場に立って身軽になる(メタボ脱出)努力をしたいと思っています。
昨今のマスコミの論調によると日本はあたかも社会秩序が崩壊して二等国家に転落してしまった様な報道が目立ちます。この度の父の入院を通して感じたのは、日本は世界に冠たる福祉国家であるとの思いでした。不特定多数の一般市民に対する病院の緊急窓口の対応、最新の検査,医療設備、急患受入病院のネットワーク、訓練された救急スタッフが乗るハイテク救急車、搬入先病院の受入態勢、優秀で親切な医師や看護士など正に地獄に仏の想いを強くしました。
支払った医療費も高齢者対象の驚くほど低い額は日本の医療制度が優れている証拠だと思いました。救急車が無料なのも世界では少数派と聞いています。
大昔学校で先進国イギリスの社会福祉制度「揺りかごから墓場まで」を習った事がありますが、21世紀の現在ではどんな先進国も制度そのものが深刻な危機に直面していると報じられています。言い換えればパラダイスの様な国は今は世界のどこにも無いと云う事です。日本もこれからの急速な高齢化社会に対応できる様、現在の医療福祉制度を維持,改善するための国民的コンセンサスを早急につくる必要があると思います。
消費税(5%は欧米先進国に比べ極端に低い)のアップは応分の負担として避けて通れないのではないでしょうか?
もう一つ痛切に感じた事は、世の中確実に世代交代が進んでいるとの思いでした。我々に対応してくれた医師や看護士、病院関係者など殆どの人たちが我が息子と同じ世代の方々でした。我々の時代は完全に過去のものとなり、次の世代が確実に今の社会を背負っていると云う厳然たる事実を見せつけられ、少し寂しくまた大いに頼もしい想いをした次第です。
おわり
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